ワールドワイドで絶対必須条件。本当にワールドワイドで成功しないといけないのか
メタルギアソリッドシリーズの監督として有名で、世界のトップゲームデザイナーの一人である小島秀夫監督がゲーム製作の未来について、今週号の週刊ファミ通(2011/7/7)の雑誌コーナー「VIPに訊く」で興味深いことを指摘している。
ゲーム製作の在り方を根本的に考えさせられる内容なので、ゲーム業界だけではなく、ゲームファンにも必見の内容だ。今回はこの中で気になる箇所をいくつか紹介しよう。
ソーシャルゲームの可能性小島氏「TwitterやFacebookはリアルタイムでつねに飛び込んでくる。そっちのほうが楽しいんだから、ゲームは変わらざるえないんです。単に暇つぶしのためのゲームではなくなると思います」
この後、追加で英語圏じゃないということに触れている。また、Facebookが日本では流行しない原因の一つである「日本人の匿名性を好む傾向」についても指摘している。
TwitterやFacebookは、つねに情報がリアルタイムで発信される。このアドバンテージは非常に大きい。情報化社会の到来によって、一秒でも早く情報を得ようとする人々が増えている。その情報にフォローしておくだけで、簡単に手に入れることができるのだ。
ゲームの最新情報から、ゲームの攻略情報から、あっと驚くゲーム製作の秘話など、その人が持っている情報がその業界に通じていればいるほど面白い情報となりやすい。今はまだ出ていないが、将来はFacebookやTwitterの気になる情報を集めた雑誌や電子書籍が作られるだろう。それだけ情報を得るには、TwitterやFacebookは有効だということだ。
もちろん、個人的な会話や、近所でしかわからない会話なども出来るわけで、そうした楽しさを人々がさらに共有すれば、ゲームが暇つぶしというだけの存在ではなくなるというのが小島氏が述べたことだ。
これについてはどう思うだろうか。むしろ、ゲームはこうしたTwitterやFacebook、さらにSkypeなどのインターネットツールを活用できるゲームが前提の物になるのではないかと筆者は考えている。
例えば、PS3、Xbox360のFPSゲームで遊んでいたときに、知り合い同士ならTwitterで直接指示することが出来るわけだ。もっと言えば、Skypeなどの音声電話を使うことでも、音声でリアルタイムに指示をしながら、ゲームに参加することができる。ゲーム内のチャットだけにこだわることは別にないのだ。
ワールドワイドを目指すなら組織の在り方を変えるしかない。小島氏「海外に向かうのであれば、海外市場向けの開発チームと、グローバルを目指す開発チームに大きく分けるしかないと思いますよ。同じ組織でくくるのは無理です」
この後、勤務形態から給料形態まで別々にする。海外には優秀な人材は山ほどいる。だが、それを雇うにはお金をかけないといけない。ハリウッドと日本の映画スターでは、ギャラが全然違うと述べている。
これについては同意だ。今、日本と海外ではゲーム製作レベルでは大きく差をつけられている。それはグラフィックやシステム、斬新な発想などに至るまで数多くの分野だ。それにかけて、ゲームソフトの開発費が高騰している。海外で売れる作品の本数は日本とは比べ物にならない。数百万、下手すれば数千万本という売上本数があるわけだ。
今、そうした海外のヒット作品の売上にまともに対応出来るのは、任天堂一社しか存在してないのが現実である。もちろん、グランツーリスモシリーズや、メタルギアソリッドシリーズのように、海外作品にも対抗できる売上本数を誇るソフトは存在するが、それはほんの一握りにしか過ぎない。
本当にワールドワイドで成功しないといけないのか小島氏「極端に言えば、アメリカ人は拳銃持って、宇宙人を撃つようなゲームが好きなんです。その面白さを理解できないなら、世界に向けてモノを作るべきではないし、作る必要もないんです。だって、日本人が“なんで宇宙人なんだよ?”って思うのと同じように、アメリカ人は“なんでフェミニンな少年がデカイ剣を持って、日本で戦うんだよ?”って思っているわけですから」
ワールドワイド成功における絶対的な条件ともいえるこの欧米文化と日本の文化の違いについての誰もが思う疑問を指摘している。これについては、日本のメーカーが海外に進出するにつれて、絶対に避けては通れない命題となっている。
海外の大ヒット作品のほとんどが銃で何かを撃つゲームである。中にはオブリビオン、ドラゴンエイジみたいなファンタジーゲームも存在するが、大抵はFPSだ。敵を銃で撃って倒すのが欧米人は大好きなのだ。そうとしかいいようがない。
この文化の違いについてはゲーム製作には非常に重要だ。欧米のゲームが日本人受けしないのはキャラのグラフィックと描写表現にあると良く指摘される。
日本人にはアニメタッチで可愛らしいキャラが好まれるが、欧米ではそのようなタッチは好まれない。これはエバークエスト、ウルティマオンラインなどの海外のMMOをプレイするとよくわかる。ただ、FF11は海外のオンラインゲームとしても、成功した部類だと思われる。韓国産MMO(ラグナロク、トリックスター、リネージュ2など)も同じアジア圏だと、日本風のタッチが好まれるようだ。これは欧米とアジア文化の違いともいえる。
小島氏は後で、ターゲットの「細分化」の重要性について述べている。まさに説明してきたとおりの話だ。ワールドワイドといっても、どこを目指すかで大きく異なる。ゲーム産業は、日本以外ではまだまだ成長が見込める分野となっている。欧米はもちろん、新興国市場も、ゲーム人口は確実に増加している。
以上になるが、小島氏が指摘したことが、日本のゲームメーカーの、今後の方向性を示唆していると思われる。日本人向けに作っても、ある程度開発費を抑えて、売上本数が見込めるなら、それで食べていけるのだ。
そうした意味では、女性向けゲームというのは、これからも伸びていくジャンルである。他にも過去の作品のダウンロード販売なども、数が増えれば立派な収入源として期待出来る。これからはそうした様々な収入源が模索されていくことだろう。つまり、細分化は固定ファンを大切にすることにも繋がるのではないだろうか。
大事なのは固定ファンを大切にすること固定ファンのほうがそのゲームに使うお金の必然的に大きくなる。限定版購入から、追加ダウンロード販売などを全て網羅すれば、様子見で購入したユーザーの何倍ものお金を使ってくれることになる。そうした意味ではメーカーのブランドの力は大きい。
このゲームメーカーが好きだから購入するというアドバンテージはゲームに限らず、様々な商品に存在する。細分化とは、そうしたニーズの見極めと固定ファンの拡大するための必要な作業と言い換えることができるかもしれない。
ファミ通.com
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