ゲームに必要なものとは一体何なのか
今年、スクエニの販売業績予想が「ファイナルファンタジー14(FF14)」の失敗などが原因で大きく下方修正が行われたニュースがある。まずは少し振り返って見よう。
業績販売予想売上高:1600億円 → 1300億円
営業利益:200億円 → 80億円
経常利益:200億円 → 60億円
純利益:120億円 → 10億円
ニュースで話題になったのは純利益が90%以上減少という下手すれば赤字という修正予想だった。スクエニという日本を代表するRPGブランドが、ユーザーから見限られてしまっているために起こっている今のスクエニの現状が端的に表されている。
ゲームソフトの開発費は年々増加しているわけだが、特に、人件費というものが莫大にかかる。「ファイナルファンタジー14」というオンラインゲームの再開発となるので、無料期間の延長で無収入。そういった事情が業績予想の背景にあるのだが、もう一つ注目して欲しい事象がある。それはスクエニが販売したXbox360版の「ファイナルファンタジー13(FF13)」の売上だ。
驚くべきことなのか、予想通りなのかはユーザーにお任せするが2万本ほどしか売れていない。PS3版の売上は初週で150万本以上を超えていた。だが、Xbox360版はわずか初回で2万本なのだ。
ほとんどユーザーがPS3版を購入したからだという見方もできる。しかし、開発のスタッフがFF13は日本ではPS3版のみの販売にするという述べていたにも関わらず、Xbox360版を出した結果がこうなったという視点も考える必要がある。
元々、海外ではXbox360でも販売したわけなので、それを日本語版に持ってきただけなので、開発費はそれほどかかってはいないだろう。だが、スクエニがやったことは日本ユーザーに対する裏切り行為という現実があり、それがXbox360版の売上に響いているかも知れないという可能性はないのだろうか。
2万本売れれば元は取れたかどうかは知らない。だが、2万本以上にユーザーの失望は大きかったと筆者は考えている。スクエニというブランドイメージがだんだんと悪くなっているのだ。
前置きは長くなったのだが「ゲームに必要なものとは何なのか」を今回は考えていきたい。但し、断っておきたいのはスクエニといっても、主に「スクウェア」の話である。エニックスとは分けて考えて欲しい。
アイディアファクトリーの業績今年、スクエニを始め、多くの日本ゲームメーカーは売上を減少させた。だが、それとは対照的に今年売上を伸ばした企業がある。それがアイディアファクトリーである。少しアイディアファクトリーの業績を振り返ろう。不況とよく言われる日本の市場で売上を伸ばしたのはなぜなのか。
見ての通りスクエニと比べものにならない程の低い売上高であるし、どこを取ってもスクエニが負ける数値ではない。だが、よく見るとアイディアファクトリーは年々売上を伸ばしているところに注目して頂きたい。
アイディアファクトリーのゲームって何かあったのか。全然思い出せないという人もいると思うので、少し代表的なゲームの名前を紹介する。二世の契り、超次元ゲイムネプテューヌ、アガレスト戦記2、薄桜鬼 黎明録の4つだ。筆者はスペクトラルタワーが好きだったのだが、そんなゲームメーカーの知名度だ。
これだけ見ても、アイディアファクトリーが業績を拡大させているのかわかりにくいかもしれない。だが、アイディアファクトリーが重視しているのは女性ユーザー用の恋愛ゲームなのだ。12月にもアイディアファクトリーのゲームが出ている。
ターゲットは女性ユーザー。スクエニも女性向けのゲームを携帯アプリで開発していたが、アイディアファクトリーはその女性向けのゲームの分野ではスクエニの遙か先にいる。
会社の規模は違いすぎるので、簡単に比較できるようなものではないが、では、なぜ、アイディアファクトリーは業績を伸ばしているのだろうか。それはコアなファン層を掴みながら市場を拡大させていくからに他ならない。
他にもこの手のゲームに強いメーカーがある。それはコーエーだったりするが、今回は割愛させていただく。
スクウェアだって当時は小さい会社だった別に筆者はスクエニに恋愛ゲーム市場を重視した方が良いとか述べているわけではない。スクエニ(スクウェア)も昔はそうだったのだ。
ファミコンのキングスナイトを開発したあの当時を思い出して欲しい。ディープダンジョン3もクソゲー扱いされた。ファイナルファンタジー、半熟英雄を開発した頃から、少しずつ知名度が高まってきて、ファイナルファンタジー3で一気にユーザーへと広まった。それまで支えていたのはコアなファン層だったのだ。
ファイナルファンタジー2だって、今は名作扱いされているが、戦闘システムが独特のために発売当時はクソゲー扱いされていたのを覚えている。それを面白いと広めて行ったのもスクウェアのコアなユーザーであった。
スクウェアのファイナルファンタジーシリーズが爆発的に広まるのは3からであり、その後、スーパーファミコンで4,5,6と出して、スクウェアというブランドを確立させた。圧倒的な存在感があった。あの当時、ゲームの関心事はファイナルファンタジーかドラゴンクエストというほどだった。
そして、PlayStationが出て、ファイナルファンタジー7はさらなる進化を遂げていった。当時は凄かったCG技術を駆使した7は飛ぶように売れた。FFシリーズの売上は7までは順調に増加していた。7が最高売上で400万本を超えている。
しかし、8からは364万本、9は279万本、10は310万本、12は241万本と落ちてきている。
*この数字は国内の出荷本数であることに注意してもらいたい。また少しデータが古い。
13の国内販売数は現在190万本。200万本にすら到達していない。これが今のスクエニの現状。7が最盛期とすれば、今はちょうど半分ぐらいのソフト販売実績となる。
一種のスランプと見るべきなのか。これからスクエニブランドが低下していくのはまだまだわからないが、日本の不況なんて関係ないし、市場が縮小しているからという開発側の言い訳は関係ないと述べたい。すでに316万本の売上を誇るモンハンポータブル3rdを見ればわかるとおり、売れる物は売れるのだ。
問題はユーザーの選択肢から、スクエニのゲームだから買わないという信用の低下であろう。アイディアファクトリーを見ればわかるとおり、確実なコア層の拡大が売上を伸ばしている。コアなユーザーが離れてしまうスクエニとは対照的な存在となってしまっている。
コアなユーザーが離れてしまったのは、ゲームの質の低下が主な原因だ。それがFF14の大失敗を招いた。ユーザーが満足できるゲームとして仕上がっていないゲームを世に出していき、過去の名作のリメイクでなんとか食い扶持を稼いでいる。悪く言えばそうなる。
そして、そのようなリメイク商法がユーザーからも飽きられており、市場を拡大させるかどころか、返ってブランドの低下を招いている。なぜなら、そのリメイクがまた原作以上に質の低下を招いているからだ。一つ例を上げよう。スクエニが新たに発表したPSP版のFF4の画像を見てもらいたい。
よく見ればわかると思うがネットを騒然させた「マザーポム」である。FFを知っているなら人間ならこのような有名な敵キャラの濁点間違いなど起きないし、それを気付かないで画像を出しているスクエニのゲーム紹介には疑問が浮かぶ。
ボムと言えば、召喚獣にもなっているほどのFFの代表モンスターだ。それをポムなんて表現する時点でユーザーを馬鹿にしているとか思えない。実は濁点の間違いはこれだけではない。
一体、今作のFF4の開発陣はどうなっているのか。日本語が相当不自由なのか。そこまで心配する羽目になってしまった。リメイクもこうなってしまえば、ただの笑いのネタにしかされなくなってしまう。作り込みは駄目で、チェック機能も生きていない。
結局、過去の名作も作り込みやチェックが甘いためにマイナス評価を受けてしまう。何というか、スクエニのソフト開発に対する姿勢そのものが疑問に思えてくる事態なのだ。
これを由々しき事態だと思うのか、過去のブランド実績で生きていこうとするのか、もはや殿様商売もだんだんと通じなくなっている。多くのコアなユーザーは警鐘を鳴らしている。それが届いているなら良いのだが。
結局、今年「勝ち組」なのはアイディアファクトリーということになる。
SQUARE-ENIXアイディアファクトリー
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